14.1 シミュレーションとは
  

 


図14-1  HASPの概念図

日本語で書かれた命令に基づき原子力施設で巡回点検を行う、人間型知能ロボットの要素技術を開発している。

  


 原子力プラントのような高放射線下における作業員の被曝低減化および省力化のためには、プラントの知能化・自動化技術の開発、さらに、人間作業を代替する知能ロボットの開発が必要です。原子力プラントを巡回点検する知能ロボットに関する基盤技術の開発を行っている「人間動作シミュレーションプログラム(HASP:Human Acts Simulation Program)」では、図14-1に示すように、計算機上に設定された人間型の知能ロボットが日本語で記述された命令文を理解し、環境データを用いて自己の行動を計画し、プラント保守作業を遂行する過程が論理/数値シミュレーションされます。また、動力学的に計算されたロボット動作は、高速計算機上で3次元環境と共に可視化されます。
 HASPを構成する要素技術のうち、論理シミュレーションに関する原子力知識ベースの研究では、
  • a)日本語で与えられる命令文の構文・意味解析からロボットの行動を高速・自動生成する技術のための「命令理解・行動計画の研究」、
  • b)ロボットの動作空間を定義し、シミュレーション結果を可視化する技術のための「環境設定・映像化技術の研究」、および
  • c)ロボットが知覚情報に基づいて行動したり、環境の異常を検出する技術のための「環境認識技術の研究」

を行っています。
 数値シミュレーションに関する高速シミュレーション技術の研究では、

  • a)人間型ロボットの動きを動力学的に計算・評価する技術を開発し、人間型ロボットの設計基準を与えることを目的とした「ロボット動作・ハードウェアの研究」、
  • b)ロボット躯体に対する放射線損傷度の評価手法のための「被曝線量計算の研究」、および
  • c)HASPにおける論理/数値シミュレーションの高速化を目的とした「高速モンテカルロ装置(Monte-4)の開発」

を行っています。


参考文献

M. Akimoto et al., HASP: Human Acts Simulation Program, Proc. of ANS Fifth Topical Meeting on Robotics and Remote Handling, Knoxville, Tennessee (1993).

K. Higuchi et al., Development of JAERI Monte Carlo Machine and its Effective Performance, Computer Assisted Mechanics and Engineering Sciences, Vol.1 (1994).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1995
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