1.2 炭酸ガスでウランを分離する
   


図1-2  超臨界二酸化炭素による抽出実験装置

抽出容器内のウランはトリ-n-ブチルリン酸(TBP)と錯体を形成し、超臨界状態の二酸化炭素に溶解し捕集容器に集められます。

 


図1-3  二酸化炭素の状態図

炭酸ガスは通常ガス状態ですが、31.3℃、72.9気圧以上になると超臨界状態となります。

 


 一般にガス状物質は物質特有の臨界温度、臨界圧力以上にするとガスでもなく液体でもない超臨界流体となります。二酸化炭素は31.1℃、72.9気圧以上で超臨界状態になります。この状態での密度は液体に、また粘性等はガスに近いため、物を溶かす力、すなわち溶解力は液体に近く、拡散及び透過力等はガスに近い性質を持っています。このようなガスと液体のちょうど中間的な都合のよい性質をもつ流体を利用して、これまでの液体と液体、あるいは固体と液体系での抽出法に替わる新しい方法を開発するための研究が進められています。
 現在、ウランの分離回収には有機溶媒を用いる液体と液体系での抽出法が広く用いられていますが、抽出操作に伴って多量の有機廃液が発生します。これに対し、臨界流体を溶媒として用いる方法では、抽出後圧力を少し下げることにより溶媒をガスとして容易に完全分離、回収できるという利点があります。そこで、トリ-n-ブチルリン酸(TBP)を少量添加した超臨界状態の二酸化炭素を用いて硝酸溶液からウランを分離回収し、この方法の有用性を明らかにしました。今後は、TBP以外の抽出剤の適用も図り、超ウラン元素をはじめ種々の元素の抽出条件を求めるとともに、使用済核燃料の再処理や高レベル放射性廃液の群分離への適用に発展させることを計画しています。


参考文献

S. Iso et al., Extraction of Uranium(IV) from Nitric Acid Solution into Supercritical Carbon Dioxide Containing Tri-n-butylphosphate, Chem. Lett., 1995 (5), 365 (1995).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1996
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