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原子の中心にある原子核は陽子、中性子、パイオン等が核力と呼ばれる力で集まっていますが、外から加速された粒子がこれに入射するといわゆる核反応が生じます。入射粒子が核内粒子と1〜2回衝突して飛び出すか、あるいは入射粒子が原子核に捕まり全体が熱平衡になった場合は簡単に計算できますが、その中間、例えば入射粒子が5回核内粒子と衝突して飛び出すような多段階反応は従来の方法ではうまく計算できませんでした。 私達はこの問題を分子動力学法の一種であるQMD法と呼ばれる手法で解決できると考えています。図1-7に示すのは、ニッケル核に120 MeVのエネルギーの陽子が入射し、核内核子との相互作用でエネルギーを失って飛び出すときに、どのエネルギーでどの角度に陽子が出るかの確率を実験と計算で比較したものです。図1-8は、1.5 GeVの高エネルギー陽子が鉄原子に入射して反応が終わった後、残された原子核の分布を示す実験値と計算値の比較です。図1-7での後方散乱角成分や図1-8での質量数40前後の原子核の生成は、入射陽子が核内粒子と5回以上衝突して引き起こされる多段階過程です。このようにパラメータ等は何も変えない計算で様々な実験を再現でき、これら多段階過程の理解が深まりました。 |
参考文献
K. Niita et al., Analysis of the (N,xN’)Reactions by Quantum Molecular Dynamics Plus Statistical Decay Model, Phys. Rev. C52, 2620 (1995). |
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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1996 copyright(c)日本原子力研究所 |