2.1 ITERの中間設計報告書がまとまる
   


図2-1  運動的シュタルク効果によるプラズマ電流分布の測定

JT-60の測定装置の配置とその構成を示します。プラズマ中にビームとして入射された原子は、プラズマとの衝突の結果、光を放射します。放射された光は磁場中を運動する原子の感じる電場によって偏光するので、その偏光を検出して、プラズマ電流のつくる磁場の向きを求めます。この方法によりプラズマ内部の14点で測定ができます。

 

図2-2  JT-60プラズマ電流波形と電流分布の時間変化

電流立ち上げ後の早い時間(3.6 秒)に、電流分布が中心部で低い凹んだ形になっているのがわかります。

 


 JT-60などのトカマク装置では、プラズマ電流は装置の性能を決める最も基本的な物理量です。プラズマの安定性や閉じ込めの性質を深く研究するためには、電流の大きさだけでなく、プラズマ内部でのその分布を詳しく知る必要があります。この目的で、近年“運動的シュタルク効果”を利用した電流密度分布の計測法が開発されてきました。これは、プラズマの加熱のために入射された水素または重水素の高速の原子が、トカマクの磁場を横切って運動するときに感じる電場によって、原子が発する光のスペクトル線が分岐し、かつ偏光する(光の振動の方向が特定の方向に偏る)ことを用い、その偏光の方向を測定する方法です。偏光の方向から電場の方向が分かります。原子の運動の速度とトロイダル磁場は既知ですから、これからプラズマ電流がつくる磁場の方向が分かり、プラズマ電流の局所的な分布を求めることができます(図2-1)。
 図2-2はJT-60の測定例です。JT-60では、光の波長検出系に工夫を施して、偏光角の測定精度の向上を図り、いまや電流分布と閉じ込めの関係を調べる研究の必須の計測法となっています。


参考文献

T. Fujita et al., Current Profile Measurements with MSE Polarimeter in JT-60U, Seventh International Toki Conference on Plasma Physics and Controlled Nuclear Fusion, Toki Japan (1995), Nucl. Eng. Des., 34-35, 289 (1997).

ご覧になりたいトピックは左側の目次よりお選び下さい。



たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1996
copyright(c)日本原子力研究所