2.3 プラズマの「クッション」でダイバータ板を守る
   


図2-5  低温・高密度のプラズマからの放射によってダイバータ板への熱の流入を減らす仕組み(放射冷却ダイバータ)

炉心部からダイバータ部へ流入してくる熱や粒子のエネルギーを低温・高密度ダイバータプラズマとの作用で光の放射や中性ガス粒子の運動エネルギーの形にかえて周囲に散逸させ、ダイバータ板への熱の流入を減らします。

 

図2-6  ネオン・ガスをダイバータ部に注入して放射冷却ダイバータを生成

最大2万5千kWの高い加熱入力のもとで放射冷却ダイバータを生成し、ダイバータへの流入エネルギーの約70%を放射として逃がしてやることに成功しました。ダイバータ板への熱の流入は著しく減少できました。

 


 定常トカマク炉へのもう一つの鍵はダイバータです。ダイバータは炉心部から余分の熱や粒子を排出するため、また逆に炉心部に不純物が入り込むのを防ぐため、磁場の形を工夫して熱や粒子を“ダイバータ板”に導き、中性ガスとして排気する仕組みです。ダイバータ板には大量の熱や粒子が直接流れ込むため、損耗の少ない材料やその形状・構造などの研究が必要ですが、一方できるだけダイバータ板の熱負荷を減らす工夫が重要です。このためダイバータ板の近くにいわば“クッション”の役をする、密度が高く温度の低いプラズマを作って、ここで流れ込んでくる粒子のエネルギーを光に換えて回りに放射してやり、ダイバータ板への熱を減らす放射冷却ダイバータの研究が進められています(図2-5)。
 JT-60では、光を出しやすいネオン・ガスをダイバータ部に吹き込むことによって、ダイバータ板の表面近くに低温・高密度のプラズマを作り、ここに流入してくるエネルギーの70%を光として放射させ、ダイバータ板への入熱を著しく減らせることを実証しました(図2-6)。このとき炉心部のプラズマの閉じ込め性能もほぼ良好で、ITERなどの核融合炉のダイバータ設計のために重要なデータを提供できました。


参考文献

K. Itami et al., Improved Confinement of JT-60U Plasmas, Plasma Phys. Control. Fusion, 37, A235-A265 (1995).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1996
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