2.4 プラズマの急激な変位を抑える
   


図2-7  JT-60のコイル、真空容器系の計算モデルと計算領域。実線の曲線部分がプラズマの断面

真空容器は100個の離散的要素で模擬し、計算領域を80×80の網目に分割(5 cm間隔)して計算しています。

 

図2-8  ディスラプションに伴うプラズマの垂直方向の変位

計算結果に基づき、プラズマを最適位置に置いた安定な場合(JT-60の垂直方向の装置中心より、15 cm程上にプラズマを生成)と不安定な場合を示す実験結果です。不安定な場合の不安定性の成長速度も模擬計算から説明できます。不安定性によるプラズマ電流の消滅の様子は波線で示してあります。

 


 トカマク炉を安定に運転するためには、トカマク・プラズマに固有のプラズマ電流の急速な消滅現象(ディスラプション)を良く理解し、これを制御する方法を開発することが必要です。電流の消滅に伴って、しばしばプラズマ全体が垂直方向に急激に移動し(変位)、ダイバータ板などの構造物に大きな電磁力を及ぼす現象が観測されています。
 JT-60では実験的研究とともに、このような現象をできるだけ忠実に計算機によって模擬・再現し、ディスラプションの動的な機構を詳しく調べています。図2-7はJT-60のコイル、真空容器系の計算モデルです。計算の結果、真空容器の幾何学的な非対称性により生ずる渦電流の非対称な分布から、JT-60のディスラプションに伴う急激な垂直移動を説明できること、さらにプラズマを最適位置に置くことで、この変位を回避できることが分かりました。図2-8はこの計算に基づいて行った実験の結果を示します。位置が最適でない場合には、プラズマは急速に下方に変位しますが、この不安定な変位の起こる速さ(成長速度)は、初めにプラズマの平衡のために外部から与えていた磁場構造の特性が、渦電流の影響で劣化することを考慮に入れると定量的に説明できることも分かりました。このような計算機シミュレーションは、ディスラプションの現象を整理・体系化し、装置設計上の指針を与える点で大変有用です。


参考文献

Y. Nakamura et al., Mechanism of Vertical Displacement Events in JT-60 Disruptive Discharges, Nucl. Fusion, 36, 643(1996)

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1996
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