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核融合発電炉では重水素とトリチウムを燃料として使用します。トリチウムは弱いβ線を出す放射性物質で、外部へ漏らさないようにしなければなりません。従来このためのトリチウム除去設備では、触媒でトリチウムを酸化し水分吸着剤でトリチウム水を除去しています。この方法ではガスの処理量が大きく、湿気として空気に含まれる普通の水もまじり、結果として装置の大型化・複雑化、信頼性の低下等が懸念されます。核融合炉でのトリチウム取り扱い量はかなり多く、上記の懸念はより大きくなります。 ポリイミドの中空糸で構成される膜は水素(トリチウム)ガスと水蒸気を選択的に透過させる機能を持ちます。この性質を利用してトリチウム除去設備をつくると、処理ガスの減容、普通の水蒸気の分離が可能となり、設備の小型化、信頼性の向上が期待できます(図2-11)。直径約 0.7 mm、長さ 1.4 m のポリイミド中空糸を1万本程度束ね、トリチウム除去システムを構成しました(図2-12)。試験の結果約2時間でグローブボックス内のトリチウム濃度は2桁程度下がることがわかりました。また、膜の透過の前後でトリチウム濃度比は50倍、つまり最終のトリチウム排ガス処理量は50分の1に減容できます。この方法はトリチウムを扱うすべての機器の信頼性の向上や安全設備の小型化に有効です。今後大型化の見通しや、耐久性に関する安全基準等の作成にも十分対応が可能です。 |
参考文献
T. Hayashi et al., Gas Separation Performance of a Hollow-filament Type Polyimide Membrane Module for a Compact Tritium Removal System, Fusion Technol., 28, 1503 (1995). |
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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1996 copyright(c)日本原子力研究所 |