2.7 負イオンを用いて500 kV,10 MWの中性粒子ビームを入射する
   


図2-13  JT-60本体室に設置した負イオン中性粒子入射装置

電源は高速遮断の可能な500 kV、64 A、大型負イオン源(外径2 m)2台を用いて10 MW(効率約50%)の電力をJT-60のプラズマに注入します。

 

図2-14  負イオン中性粒子入射装置の性能の進展

 


 磁場による高温プラズマの閉じ込め装置にエネルギーを注入する手段の一つに中性粒子入射があります。高速の中性粒子は磁場に遮られることなく中心のプラズマに侵入し、粒子の運動エネルギーをプラズマに与えます。
 中性の高速粒子を作るのにはイオンを電場で加速した後、イオンを同種のガス中を通過させて中性化します(中性化セル)。イオンが正の荷電を持つとき、そのエネルギーが500 keV をこえると、中性化の効率は急速に低下し、全体効率を下げます。負イオンの場合中性化の効率は下がりません。一方、負イオンは不安定なので作り方には技術的困難がありました。イオン源の構造やガス組成を工夫してこの問題を解決しました。
 JT−60用の負イオンを使用した中性粒子入射装置を製作しました(図2-13)。装置の試験段階で図2-14に示すように400 kV、13.5 A等のデータを出しました。これらは全て世界記録です。継続時間はイオン源の慣らし運転で向上します。電源回路にも高周波変圧器の1次側の低圧部に開閉装置をつけ、高圧2次側での回路の高速遮断を可能とするなど、新しい技術を用いました。JT−60の特長のある加熱装置として高性能化に大きな寄与が期待されます。また中性粒子入射技術は大型構造物の均質性の高い表面組成の形成等工業的にも広範な応用があります。


参考文献

M. Kuriyama et al., High Energy Negative-ion Based Neutral Beam Injection System for JT-60U, Fusion Eng. Des., 26, 445 (1995).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1996
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