2.8 熱負荷は石油ボイラー内の50倍−ITER仕様のダイバータ板試験に成功
   


図2-15  ダイバータ板試験体とその断面図

表面材料は面積5 cm×5 cm×1.9 cm厚さの1次元炭素複合材、基盤と冷却管材は銅、流路は3本、冷却効果を高めるため管内に特殊なら旋構造物をもちます(スワール管)。

 

表2-1 ダイバータ板に対するITERの要求と試験体の達成値
  ITERに必要な条件 試験体の達成値
加熱条件 ―熱疲労試験

      熱負荷

     ―長時間加熱試験

      ―限界熱流束試験

 

15 MW/m2,10 秒,1000 回

5 MW/m2,1000 秒

20 MW/m2 以上

 

15 MW/m2,15 秒,1000回

5 MW/m2,10000 秒

20〜25 MW/m2

冷却条件 ―流速

     ―圧力

10 m/秒以下

4 MPa 以下

4 m/秒

0.25〜2 MPa

 


 ITERの第1壁の一部を構成するダイバータ内に組こまれるダイバータ板は、強い放射線環境で苛酷な条件の除熱機能を要求されます。表面はベリリウムや炭素複合材で、基盤部分は冷却管のつく銅材です。繰り返しの熱負荷に耐える、異質の厚い材料を接合する技術の開発も必要です。
 並列多流路の冷却管、1次元炭素複合材、銅基盤を組み合わせて試験体(図2-15)をつくり、電子ビームをあて、熱負荷試験を行いました。ITERのダイバータ板の要求性能と今回の試験体の熱負荷試験の結果を比較して表2-1に示します。すべての要求を試験体は満足しています。このような厚い炭素複合材の詳細な特性把握、銀を用いない接合ろう材の開発、冷却管の内部にら旋構造をつくり冷却効率を高めるスワール管の採用等多くの工夫と試行が繰り返されました。1 m2あたり5 MWの熱負荷は1cm2 あたりで言えば 500 W になります。この値は火力発電所の石油ボイラー内の伝熱材の約 50 倍の熱負荷に相当します。


参考文献

荒木政則他, ITERのプラズマ対向材料研究, プラズマ・核融合学会誌, 71(5), 384 (1995).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1996
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