2.9 歪みに強い高性能超伝導コイル−難しい加工技術を克服
   


図2-16  ジェリーロール法による導体製作法の概要

ニオブとアルミの薄板を重ねてロールを作りこれを束ねて直線状に長く伸ばすと、ロール状の薄膜で素線をつくることができます。

 

図2-17  試作ニオブ-アルミ導体の断面

導体は直径 0.8 mmの素線を 1152 本束ねます。素線には直径約30μmのジェリーロールフィラメント 250本が銅の安定材の中に埋め込まれています。

 


 核融合実験炉ITERの磁場を作るコイルは高さが17m、幅が11m あり、磁場の強さは13テスラです。強い磁場のためコイルに歪みが発生し、その歪みがコイルの超伝導特性を劣化させます。現在13テスラを作るのにはニオブ−スズの超伝導体が使用されますが、歪みの許容範囲が小さく、設計、製作や組立に大きな制限を与えています。ニオブ−アルミの超伝導体は歪みに強い導体ですが、材料を薄膜とし熱処理温度を下げないと安定化材である銅との共存の点で実用化は不可能です。
 ジェリーロール法(図2-16)で薄膜導体を試作しました。この開発は1986年に開始し、1994年に直径約1 mm、長さ7 kmの素線の製作に成功しました。アルミとニオブの厚さは最終的には 0.1〜0.2 μm になります(図2-17)。素線を細くしていく過程で切れないようにするためには材料の純度や加工温度の調整が重要でした。熱処理でも処理時間等さまざまな試行錯誤を繰り返しました。この導体はニオブ−スズの2倍以上の歪みに耐えます。その特性からITERでの使用の可能性が検討されています。さらに、この導体の性能は製作法の改良により、今後より高性能になる可能性があります。


参考文献

安藤俊就, ジェリーロールNb3Al導体の開発とその特性, 低温工学, 32(2), 38 (1997).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1996
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