2.10 5トンの重量物を1 mmの精度で動かす遠隔操作技術
   


図2-18  ITERとその容器内に敷設された状態のビークル(車両)型マニピュレータ鳥瞰図

中央部に円軌道、ビークルとビークルに装荷されたマニピュレータ、窓からの挿入架台等が示されています。円弧の一部を直線状に容器内へ送り込み、その後円周方向に進め軌道を自動連結します。軌道は4点で固定支持され、搬送重量に十分耐えます。

 

図2-19  動作試験中の実機大ビークルと伸縮アームのあるマニピュレータ

先端の組立交換ツールで部品(ダイバータ板)をつり下げています。

      搬送性能:約1.2 トン
      精  度:約1 mm以内
      搬送速度:毎分〜3 m

 


 核融合実験炉では容器内で放射化された部品の保守整備のために遠隔操作が必要です。容器内部品のブランケットは単体で高さ2m、重量は4トン程度、総数 720個になります。このような大量の大型重量物の修理・交換・組立のためには、従来の多関節ブームがありますが、取り扱い重量はブームのたわみや振動のため1トン以下です。そこでビークル型マニピュレータを考案しました。この方式の特長は容器内に軌道を敷き込み、この上をビークルが走行して近接し、短い伸縮アームのマニピュレータで重量物作業を行います(図2-18)。
 縮小サイズでの試験をもとに実規模での動作試験を行いました(図2-19)。ビークルとレールの噛み合わせ機構、軌道の自動ロック機構や電子計算機による制御等に多くの工夫を凝らしました。その結果、5トン程度の物体を1〜2 mmの精度で取り扱える見通しがたちました。この結果はITERでの要求を十分満足します。このような技術は複雑な大型構造物の自動組立等多くの分野で応用が可能と考えられます。


参考文献

E. Tada et al., Remote Handling Technology for Fusion Experimental Reactor, Fusion Eng. Des., 29, 249 (1995).

ご覧になりたいトピックは左側の目次よりお選び下さい。



たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1996
copyright(c)日本原子力研究所