3.1 世界最高、細くて強いイオンビーム
   


図3-1  ビームサイズの評価法

マイクロビームをシリコンのレリーフパターン(左)上で走査し、エッジ部分から放出される二次電子の収量ピーク(下)の鋭さから評価する。

 


図3-2  マイクロビームによる描画

マイクロビームを偏向電場ですこしずつ動かしながらプラスチック(CR-39)に照射し、高崎研究所のイオン照射研究施設名である“TIARA”と“匠”の文字を描かせた(可視化のため化学エッチングにより孔径は拡げてある)。

 


 原研では、ビームサイズ0.4μm×0.4μm、強度77pA(ピコアンペア=10-12A)の2MeVヘリウムイオンビーム形成に成功、さらに小さなサイズのビーム形成に取り組み、2MeVのヘリウムイオン及びプロトンでそれぞれ0.19μm×0.26μm(15pA),0.18μm×0.22μm(1pA) のビームサイズを実現しました。これまでfA(フェムトアンペア=10-15A)レベルでは、0.1μmサイズのMeV 級イオンビームがすでに達成されていましたが、pAレベルで0.2μmを達成したのは原研が世界で初めてです。
 この強い、1μmより小さなビームの応用として、原研では、PIXE(粒子線誘起X線分析)法と組み合わせることにより、生体の健康状態と相関があることが明らかになりつつある亜鉛などの金属元素が細胞内のどこに分布しているかなどを明らかにするマイクロPIXEカメラの開発に着手します。
 また、0.2μmが染色体の大きさに相当することから、生体細胞照射による局部不活性化の研究や、宇宙放射線によって半導体デバイスのどの部位で不具合が起こるかの解明などに応用します。


参考文献

T. Kamiya et al., Submicron Microbeam Apparatus Using a Single-ended Accelerator with Very High Voltage Stability, Nucl. Instrum. Methods Phys. Res., Sect. B,104, 43 (1995).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1996
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