3.2 炭素原子をきれいに並べてダイヤモンド膜
   

This picture, 14KB


図3-3  反射高速電子回折法(RHEED)による蒸着状態のリアルタイム測定

Si(111) 基板に10-7Paの真空下で高純度(同位元素分離まで行う)の炭素イオンを蒸着させます。同時にその場で25keV電子線による蒸着表面のRHEEDパターンを測定します。

 

写真1
(a) (c)
(b) (d)

写真2

図3-4  RHEEDパターンの変化

写真1(a)はSi(111)のRHEEDパターン、(b)は10eV12C+1015/cm2蒸着後、(c)は1016/cm2蒸着でSiとSiCとの2相の混在を示し、(d)は1017/cm2蒸着、弱いリングパターンは多結晶化(グラファイト形成)を示します。写真2は100eV12C+1018/cm2蒸着のもので、ストリーク状パターンはダイヤモンド構造(格子定数3.6Å)の成長を示します。

 

表3-1 イオンビーム蒸着による炭素薄膜形成過程(RHEED)

 


 ダイヤモンド薄膜の作製については、化学気相成長(CVD)法の実用化が知られていますが、高温での物質処理で、得られる試料は不純物を多く含んだ多結晶体です。一方最近では、室温低圧下での高純度合成法としてイオンビーム蒸着(IBD)法による結晶ダイヤモンド薄膜の作製が期待されていました。
 IBD法では、同位元素までも分離したエネルギーの揃ったイオンを蒸着させるため、膜の作製条件を厳密に制御できます。私達は、反射高速電子回折法(RHEED)を用いて、炭素薄膜の成長を世界で初めてリアルタイムで調べました。
 その結果、入射イオンのエネルギーが重要なパラメーターであり、基板物質の結合エネルギーに近い10eVの場合よりも100eVの場合のほうがダイヤモンドの単結晶化に適していることを初めて明らかにしました。


参考文献

大野秀樹他, ダイヤモンド単結晶薄膜形成技術, 工業材料, 44(2), 110 (1996).

ご覧になりたいトピックは左側の目次よりお選び下さい。



たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1996
copyright(c)日本原子力研究所