3.3 相互に混じり合わない金属多層膜ができた
   


図3-5  (上)重イオンラザフォード後方散乱法による多層膜の深さに敏感な構造解析

Nb/Cu多層膜から反跳される重イオン(例えば16Oイオン)のエネルギーが標的核の質量(NbとCu) に応じて変わるため、この図のようなスペクトルが得られます。Cu層はさらに63Cuと65Cuからのピークが重なっています。この測定から、Nb/Cuの界面は相互拡散のない平滑なものであることがわかります。

(下)共鳴核反応法による多層膜に溶解させた水素の存在状態の解析

入射15Nイオンのエネルギーを逐次増加させ、Er=6.385MeVの共鳴核反応1H(15N,αγ)12Cを誘起させ、発生γ線(4.43MeV)の収量を測定することにより、水素原子の深さ方向の分布を非破壊的に行います。この結果、水素原子はNb層にのみ局在することが明らかになりました。

 


 分子ビーム蒸着法により形成されるニオブ/銅多層膜は、ニオブ(Nb) と銅(Cu)が互いに固溶しないため界面平滑性が保たれ、高効率X線反射材料等の新しい材料をつくりだすことができます。これらの多層膜の歪を緩和するためには、水素の導入が有効であり、その存在状態を知る必要があります。
 私達は、蒸着条件(基板温度、基板方位)を調整することにより、相互拡散の無い、界面が平滑な多層膜をつくることに成功しました。
 更にこの多層膜中で、一般に非常に困難とされている水素の深さ方向分布の分析を、イオンビームを用いた共鳴核反応法によって分析し、水素はNb層に局在することを明らかにしました。


参考文献

S. Yamamoto et al., Analysis of Hydrogen in Nb/Cu Multilayers Using Ion Beams, J. Alloy and Compounds, 231, 310 (1995) .

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1996
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