3.4 ミクロな孔の大きさをコントロールできる高分子フィルムのふるい
   

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図3-6  貫通孔の作製

50-100μm厚の有機高分子CR-39フィルムに核子当り11.6MeVウラン又は6.2MeVクリプトンイオンを照射後、60℃で1時間、6モル濃度の水酸化ナトリウム水溶液中でエッチングすると貫通孔が得られます。ここに他の高分子を共重合させたものを使うと孔径を0.5-30μmの範囲で制御できます。

 

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図3-7  孔径1.3μmの多孔膜(50μm厚)の表面にアミノ酸を含むゲル層を1.3μm作ったものの原子間力顕微鏡写真

温度の変化によって孔の開(b)閉(a)が見られます。
放射線重合させて作ったアミノ酸を含むゲルは、水中で相転移温度14℃を境に低温側で膨張し、高温側で収縮します。膨張時の体積は収縮時の体積の425倍にもなります。

 


 重イオンが高分子膜を通過した後に残る飛跡を化学処理することにより、孔の配列、分布、形状、大きさが制御された多孔膜が得られます。このイオン穿孔膜にいろいろな機能をもつ分子を放射線グラフト重合でつなげると、特定の分子だけを通過させたり、pHや温度など外部環境の変化に応じて孔を開閉する機能を持たせたりすることができます。
 人工臓器、ドラッグデリバリシステム(薬を体内で有効に搬送するシステム)、血液成分の分離など、多方面への応用が期待できます。


参考文献

M. Yoshida et al., Novel Thin Film with Cylindrical Nano-pores that Open and Close Depending on Temperature; First Successful Synthesis, Macromolecules, 29(27), 8987 (1996).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1996
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