3.5 放射線で環境に優しい天然ゴムに変身
   


図3-8  加硫ゴムフィルムの屋外曝露による引張り強さの変化

従来法と放射線法で作った製品について、使用済みゴム製品を自然環境にさらしたときの分解速度を比べてみると、従来法のものが分解が遅いのは、橋かけ促進剤として使われるジチオカルバミン酸塩のもつ老化防止作用と分解微生物に対する毒性のためと考えられます。放射線法では分解が速いため環境に優しいといえます。

 


 天然ゴムラテックス(乳白色の樹液;長い天然ゴム分子が粒状となって水に分散しているもの)は、一般に、少量のジチオカルバミン酸塩と酸化亜鉛を加え硫黄粉末と反応させてゴム分子相互の橋かけ(加硫)を行い、伸び復元力の強いゴム製品になります。しかし含まれているゴム蛋白質によるアレルギー反応のため、使用者にじん麻疹や激しいショック状態を引き起すことが問題になっています。
 ところで、ゴム分子の橋かけを放射線化学反応によって行わせることもできます。私たちは、ゴム蛋白質に対する照射効果をはじめ、照射に伴う成分変化、生体適合性、対環境性、経済性をくわしく研究し、放射線法の優れた点を明らかにしました。


参考文献

幕内恵三他, 放射線加硫天然ゴムラテックスのアレルギー応対性, 日本ゴム協会誌, 68, 263 (1995).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1996
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