3.6 硬いセルロースを柔らかくしてリサイクル
   


図3-9  オイルパーム飼料化処理工程の概略

パーム果実を分離した後に残る房を2〜3 cmに細断し、無機窒素源や米ぬかなどを加えて袋詰めする(発酵培地の調製)。γ線や電子線で10 kGy〜30 kGy照射して殺菌を行った後、キノコ菌などの有用菌を接種して1ヵ月間発酵処理を行います。できた発酵産物は飼料として利用でき、同時にキノコを収穫することも可能です。

 


図3-10  放射線殺菌効果

オイルパーム廃棄物は微生物による汚染が著しいので、放射線照射によって発酵の妨げとなる微生物を殺菌する。次にオイスターマッシュルームというヒラタケ菌の一種を用いて発酵処理することにより、消化の妨げとなるリグニン含量を効率よく低下させて消化性を向上させるとともに、タンパク質含量を増大させることができました。

 


 セルロース廃棄物は世界各地で大量に発生し、焼却した際に煙害などの環境汚染問題の原因となります。資源のリサイクル及び公害防止を目的に、原研ではマレーシア原子力研究所と協力して、放射線殺菌と発酵の組合せ処理によるオイルパーム廃棄物飼料化の研究を進めています。
 世界最大のパーム油生産国であるマレーシアでは、パーム果実を分離した後に残る房や果肉繊維などのセルロース廃棄物が各々年間300万トン以上排出されますが、繊維が堅く、反すう動物でも消化できないため、飼料として利用するためには発酵処理が必要です。これら廃棄物の発酵処理を行う場合、発酵の妨げとなる微生物を殺菌することが必要ですが、電子線やγ線による放射線殺菌は、連続的に、確実に殺菌できる方法で、大量の廃棄物を処理するのに適しています。現在、原研とマレーシア原子力研究所との間で、オイルパーム飼料化の実用性評価のため、10トン/月の生産規模でパイロット試験を行っています。


参考文献

久米民和, 放射線による農林水産廃棄物の有効利用, 放射線と産業 67, 17(1995).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1996
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