3.7 配管検査に役立つ新しいイッテルビウム−169線源
   


図3-11  イッテルビウム-169 線源を入れた照射装置の現場取付状況

 


図3-12  透過写真の一例

2.5 mm 厚の鋼材の溶接部の写真で、亀裂がなく十分に溶接されていることが分かります。

 


 イッテルビウム-169 線源は、イリジウム-192 の適用できない12 mm以下の薄い肉厚の鋼材で構成される構造物の欠陥の非破壊検査に役立っています。イッテルビウム-169 線源の半減期は32日と比較的短く、線源の交換頻度が多いので、はやくから国産化が望まれており、この度製品化を成し遂げました。
 イッテルビウム-169 線源の特徴は、γ線エネルギーはイリジウム-192 に比べて低く、線源サイズが1 mmφ×1 mmと微小なので、焦点ぼけの少ない放射線透過画像(ラジオグラフィー)が撮れることにあります。放射能強度は370GBq/個ですが、研究炉(JRR-3M)や材料試験炉(JMTR)などを利用して年間6回、200個の線源を製造します。原子炉での中性子照射を効率よくするために、20%濃縮のイッテルビウム-168(酸化物)ターゲットを使っています。検査は線源を装着した照射装置でおこないます(図3-11)が、5cm厚さの鉛遮蔽材でγ線を1/100に弱められるので、狭い管理区域で他の作業と並行して安全に操作ができます。得られた透過写真の1例を図3-12に示します。将来、大型の化学プラントの細管溶接部の非破壊検査用線源として広く利用されることが期待されています。


参考文献

山林尚道, イッテルビウム-169 線源: 製造技術と利用の開発,Radioisotopes, 43(5), 296 (1994).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1996
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