4.1 水蒸気爆発を探る大規模実験とシミュレーション計算
   


図4-1  水蒸気爆発実験の概念図

溶融炉心を模擬した高温の溶融物をいろいろな条件で水中に落下させ、水蒸気爆発が発生するための条件、発生した場合のエネルギー、発生を抑制するための方法などを調べています。世界でも有数の大規模装置で高圧での実験が可能です。

 


t=0 ms t=1.0 ms t=5.0 ms

図4-2  高速度カメラでとらえた水蒸気爆発(4,000 コマ/秒)

高温の溶融物は蒸気膜で覆われています(t=0 ms)。蒸気膜がどこかでつぶれると水の急激な蒸発と圧力波により、蒸気膜は短時間に次々につぶれ、溶融物が細かい粒子となり、溶融物の持つ熱が急速に水に伝わります(t=1.0 ms)。発生した大量の蒸気は高圧のため爆発的に膨張します(t=5.0 ms)。

 


 ALPHA(事故時格納容器挙動試験)計画では、原子炉で万一シビアアクシデント(過酷事故)が発生した時の格納容器内でのさまざまな現象を調べています。このうち、水蒸気爆発実験では、高温の溶融炉心が水と接触することにより水蒸気爆発が発生し、その影響で格納容器が破損することがないかどうかを調べています。実験では約2,500℃の溶融物を水中に投下します。高速度カメラを用いた観察も行い、水蒸気爆発発生前の溶融物の拡がりや爆発の様子を調べています。また、水蒸気爆発をシミュレートするJASMINEという計算コードを開発しています。
 格納容器の中に溶融炉心が拡がった場合に、上から水をかけて溶融炉心を冷やし、事故を終息させる方法について調べました。その結果、水蒸気爆発の発生の可能性は小さいこと、発生してもそのエネルギーは十分小さいことが分かりました。


参考文献

杉本 純, 軽水炉シビアアクシデント時の伝熱流動, 伝熱研究, 34 (133), 52 (1995).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1996
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