4.2 巨大地震に対する安全性を考える
   

This picture, 56KB


図4-3  原研で開発された地震リスク評価手法

SHEATコードでは、サイト周辺で将来起こりうる地震の大きさ、位置、発生頻度等を活断層や過去の地震の記録等から定め、これら地震からもたらされる地震波の伝播経路での減衰を考慮して、発電所サイトでどれほどの大きさの地震動がどれほどの頻度で発生するか(地震危険度)を評価します。SECOM2コードでは、個々の機器の揺れ方(応答)と強度(耐力)の情報から機器の損傷確率を求め、事故の進展のシナリオを考慮して炉心損傷事故に至る確率を定めます。さらにSHEATで計算した地震危険度の情報と合わせて、炉心損傷事故の発生頻度を計算します。

 


 阪神大震災等により原子力発電所の耐震性が注目されています。我が国の原子力施設は、地震に対しても十分な安全性を確保できるよう設計されていますが、その安全性を総合的に評価して数値で表現できれば、それを高めるような最適な安全設計や運転方策を考え、一層の安全性向上に役立てることができます。
 こうした目的で、設計時に想定した地震を超える極めて稀な巨大地震をも考慮して、炉心が損傷するような事故の発生頻度(1年当たりの発生確率)を評価し、これを指標として安全性を検討するのが地震リスク評価です。我が国では特に地震が多く、厳しい耐震設計基準の整備や大規模な耐震実証試験がなされているので、それらを十分考慮できるように、原研独自の手法や解析コードを整備しました(図4-3)。また、この手法の有用性を確認するため、実機の設計を参考にモデルプラントを設定してリスク評価を行いました。この評価から、炉心損傷に至るシナリオの中では、外部電源の喪失に様々な機器の故障が重なるシナリオが比較的確率が高いことが分かりました。このような知見は、巨大地震に対する設計の余裕を確認したり、地震発生時のプラントへの影響を最小限に押さえる対応の検討に役立ちます。
 将来は、この確率論的手法が、耐震設計で想定する設計用地震の決め方や新しい立地条件に関する安全評価等、現在の耐震設計の方法を一層合理的なものにしていくための有用な手段になることが期待されています。


参考文献

K. Muramatsu et al., Development of Seismic PSA Methodology at JAERI, The 3rd Conf. on Nuclear Engineering (ICONE-3), Kyoto (1995).

ご覧になりたいトピックは左側の目次よりお選び下さい。



たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1996
copyright(c)日本原子力研究所