4.6 ここでも資源のリサイクル−原子炉解体廃棄物
   


図4-10  ガス・ダスト拡散防止用のリングフード付きの容量500 kgの誘導加熱溶融炉

 


図4-11  金属相、スラグ、ダストへの放射性核種の移行割合の典型例

主要残留核種の一つであるCs-137(半減期30年)が金属から除かれるため、再利用が容易になります。

 


図4-12  生成インゴット中の各断面における残留Co-60濃度の測定例

Co-60が極めて均一に分布していることがわかります。解体廃棄物は一般に不定形で正確な放射能測定は困難ですが、溶融により均一で単純形状のインゴットにすることにより、残留放射能を低いレベルまで正確に測定でき、安全基準との照合が容易になることを実証しました。

 


 原子炉施設の廃止措置で発生する大量の廃棄物の大半はとても放射能レベルが低く、適切な選別、管理により材料として再利用できます。再利用の推進は、廃棄物量低減のうえから、また資源の節約のうえからも重要な課題で、すでに独、英、スウェーデン等では金属廃棄物の再利用が図られています。
 原研では、再利用基準の設定や安全な処理を進めるうえで不可欠な基礎データを集めるために、鉄系金属廃棄物の溶融・造塊処理に関する基礎試験を、工業規模の500 kg誘導炉を用いて行ってきました。その結果、原子炉の解体廃棄物中の代表的な放射性核種の挙動についての特徴が明らかになりました。ストロンチウム−90(Sr-90:Sr-85で代替)、セシウム−137(Cs-137)等の長寿命核種は溶融により金属相から除かれ、比較的短寿命のコバルト−60(Co-60)がインゴット中の主要残留核種であること(図4-11)、また、均一で単純形状のインゴットを溶融によりつくることで残留放射能を低いレベルまで正確に測定できること(図4-12)などがわかりました。原研の試験では、従来の欧米のデータでは詳細が明らかでなかった炉壁残留物による誘導汚染やスラグ組成と核種の挙動との関係等のデータも得ています。


参考文献

山手一記他, 鉄系金属廃棄物の溶融・造塊時における放射性核種の移行挙動, 鋳造工学, 68(6), 644 (1996).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1996
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