環境中に放出された放射性核種は、風による移動、雨や雪による地表面への沈着、土の中や土から植物への移動など多くの複雑な過程を経て人間まで到達し、影響を及ぼします。原研ではこのような環境中における複雑な放射性核種の移動を数学的に表すモデルの開発を目的とした研究を、理研、動燃、放医研、気象研と協力して進めてきました。原研はこの中の大気中での核種の移動(大気拡散)のモデル開発を担当しました。 大気拡散モデルは、風の分布や時間的な変化を計算する部分(気流モデル)、大気の乱れを計算する部分(乱流モデル)、放射性核種の移動を計算する部分(拡散モデル)から構成されています(図4-13)。この研究の中では、これらのモデルがどの程度現実の気象を再現できるかの検証や、森林が大気拡散にどの様な影響を与えるかについての実験的研究を行い、モデルをよりよいものに改良してきました。図4-14には、モデルが地域的な風の分布や時間的変化をどの程度良く再現できるかの比較結果が示されています。 ここで完成されたモデルは、自然現象の解明の道具として地表面からわき出る自然放射能であるラドンの濃度分布(図4-15)の計算に利用されているほか、緊急時における放射能拡散の予測への利用も計画されています。 |
参考文献
H. Nagai et al., Examination of Atmospheric Dynamic Model’s Performance over Complex Terrain under Temporally Changing Synoptic Meteorological Conditions, J. Nucl. Sci. Technol., 32(7), 671 (1995). |
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