|
|
黒鉛材料は核分裂炉や核融合炉等の原子力用として、また宇宙開発用としても今後も益々使用されてくることが確実な材料です。この様なニーズは、黒鉛の優れた物理的・化学的性質、高温特性、そして核的特性からくるものですが、唯一の欠点が高温度の酸化性雰囲気中でガス化し、消耗することです。こうした黒鉛の弱点を改良するには、黒鉛そのものの耐酸化性を強める方法と、黒鉛表面を他の耐酸化性高融点材料で被ふくする方法があります。 原研では、被ふくを傾斜組成化するという方法で黒鉛材料の耐酸化性を改良しました。この方法は、粒状の酸化ケイ素(SiO)を1300℃程度の温度で加熱してガス状にし、1400℃前後で黒鉛と反応させるという簡単なものです。反応では黒鉛の炭素(C)とケイ素(Si)が置換され、黒鉛表面に耐酸化性の炭化ケイ素(SiC) が傾斜濃度を以て形成されます。この様な構造なので、材料は耐酸化性を持つと同時に、熱サイクルが加えられた場合に起こりがちな被ふく層の剥離は起こりません。また、熱衝撃や機械的な衝撃が加えられても、明確な境界がないわけですから層の剥離という現象は起こりません。反応に用いるSiOは、大変ガス化され易い化合物で、SiC層を形成するに十分なSiを供給できますし、反応温度を選択することでSiC濃度を任意の勾配にすることができます。この処理を施すに当たっては、黒鉛材料や黒鉛構造物を収納・加熱できる電気炉があればよく、寸法の大小は問題になりません。 |
参考文献
K. Fujii et al., Characteristics Evaluation of Developed SiC/C Compositionally Gradient Graphite Material, Proc. 3rd Int. Sym. on Structural and Functional Gradient Materials, 541 (1994). |
ご覧になりたいトピックは左側の目次よりお選び下さい。 | ![]() |
たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1996 copyright(c)日本原子力研究所 |