6.1 高温に耐える制御棒材料を求めて
   


図6-1  1/4波長型超伝導加速空洞

エネルギー性能
ブースターで得られる加速エネルギーを示します。点線のクーロン障壁エネルギーより高いエネルギーで核反応が起こります。従来,核反応を起こすことができたのは銅くらいまでの重イオンが限界でしたが,ブースターを使用することによって質量数200くらいまで,たとえば金同士を衝突させ核反応を起こさせることができるようになりました。

この型の空洞では、中心の導体部分の長さと波長の4分の1が一致する高周波が空洞に入ったとき定在波が誘起され、中心導体の下端のドリフトチューブ付近に強い電界が発生します。高周波電流は空洞の上部で強いが、超伝導のため高周波損失は極めて小さくなります。ドリフトチューブの前後の電界の方向は常に逆で反転を繰り返すため、パルス化したビームを加速することができます。130 MHz、4 Wの高周波電力で6 MV/mの加速電界を発生できます。

 


 重イオンを加速するためにタンデム型の静電加速器を用いると、負の1価のイオンを加速し途中で正の多価のイオンに荷電変換して再度加速できるので、高いエネルギーが得られます。さらにエネルギーを上げるためには高周波を利用した線形加速器を使い、パルス化したイオンビームを高周波の位相に合わせて加速します。高い高周波電界を発生させる際加速空洞内面に大電流が流れるため、銅などを用いた常伝導の加速空洞では大きな高周波電力と冷却能力を必要とします。これに対しニオブ等の超伝導体でできた加速空洞を液体ヘリウム温度に冷却し超伝導状態で使用すると、高周波表面抵抗が銅の約10万分の1になり、わずかな高周波電力で連続的に高い加速電界を発生できます。
 開発したニオブ製(外側は銅)の超伝導加速空洞は1/4波長の同軸線での定在波共鳴の原理を利用したもので、約6 MV/mの強い加速電界を発生できます。タンデム加速器のブースターとして建設した線形加速器には40個の超伝導加速空洞を用いています。加速された高電荷の重イオンのエネルギーは最高で1 GeV(10億電子ボルト)近くに達します。その結果、核反応を起こしうるエネルギーまで加速できるイオンは、タンデム加速器だけでは銅付近のイオンまででしたが、ブースターによって金などの重いイオンまで拡張することができました。


参考文献

竹内末広, 超電導後段ブースターによる重イオン加速, 原子力工業39(1), 67(1993).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1996
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