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核反応を“見る”といっても、原子核の大きさは約10-12cmと非常に小さいため、実際にそれを目で見ることはできません。そのため、通常は外から光や核子(中性子または陽子)などの粒子を原子核に打ち込んで、はじき出されてくるいろいろな粒子の分布を調べることで原子核の形や反応の様子を調べることになります。ここで言う“核反応を可視化する”という意味は、実際の核反応で起こっていると思われることをコンピュータ上で模擬し、その結果を3次元コンピューターグラフィックスで再現し動画として見えるようにするということです。私たちは、分子動力学の手法を原子核反応の計算に適用できるように拡張したQMDと呼ばれる方法を用いて核反応をシミュレートしています。 図6-2は、5 GeVの陽子が鉄に衝突した場合の核反応の様子を示しています。この図で、時間は左上が原点(T=0)で、右下に向かって時間が進みます。この場合、T=10で陽子は鉄の原子核に完全に入り込み、その後デルタ粒子やN*粒子の生成、パイ中間子の放出とともに、陽子及び中性子が激しく飛び散っている様子が描かれています。このような反応は核破砕反応と呼ばれています。こうして、動力学計算の結果を途中経過を含めて効果的に確認することができるようになり、核反応過程に対する理解が深まりました。 |
参考文献
S. Chiba et al., Nucleon Induced Preequilibrium Reactions in Terms of the Quantum Molecular Dynamics, Phys. Rev. C53, 1824 (1996). |
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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1996 copyright(c)日本原子力研究所 |