6.3 ニューラルネットで原子炉異常の早期発見
   


図6-3  監視システム画面

オンラインで送られてくる原子炉のデータ(白)とニューラルネットワークによる予測値(緑)です。異常が発生した信号は赤に変わり、時系列グラフが表示されます。

 


図6-4  監視結果

監視システムは異常発生後3秒で検知しますが、従来の警報システムは原子炉の異常を検知するまでに30秒を要します。

 


 原子炉を安全に運転するために、原子炉の設計段階において十分な配慮がなされていますが、運転中に故障や事故につながるような異常事象を発見することも重要です。そこで、異常が発生する際のプラント信号の微小な異常変動をすばやく検知するために、人間の脳の仕組みを簡単化したニューラルネットワークを用いました。ニューラルネットワークは、原子力プラントの過去の正常な運転データを繰り返し学習することによって、物理的知識なしに複雑なプラントを精度よくモデル化することができます。実際の測定信号とニューラルネットワークモデルによる予測値との偏差を監視することにより、出力変動時においてもあらゆる種類の異常事象の早期発見が可能となります。これまでに、運転訓練用シミュレータ及び実際の原子炉を使って監視システムの性能試験を行った結果、従来の警報システムが作動する以前に異常兆候を検知し、その有効性を確認しました。さらにニューラルネットワークとエキスパートシステムを組み合わせて、より人間の脳に近づけたリアルタイム原子力プラント監視システムは、異常事象の特定と運転員へのサポートを行います。


参考文献

鍋島邦彦他, ニューラルネットワークによる原子力プラント監視手法と実炉への応用, JAERI-Research 95-076 (1995).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1996
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