6.4 一本の検出器で原子炉全体の出力分布をまとめて見てしまおう
   

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図6-5  位置検出型核分裂計数管を用いた次世代PWR用出力分布モニタと最新PWR出力分布モニタの比較

最新の加圧水型原子炉(PWR)では、原子炉軸方向出力の偏りを4個または6個の中性子センサにより計測しています。開発を進めている計測システムでは、一本の位置検出型核分裂計数管により軸方向出力を連続した分布として計測が可能になります。

 

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図6-6  位置検出型核分裂計数管の作動原理

中性子を検出する核分裂計数管の陽極をソレノイド構造にして、核分裂計数管をパルス遅延線として設計すると、陽極からの出力電流パルスを遅延させることができます。この遅延パルスと陰極からの高速伝播パルスとの時間差から中性子の検出位置を計測することができます。

 


 原子炉の安全保護用の情報を得ること及び燃料燃焼管理の効率化を図るためには、原子炉炉心の出力分布を計測することが重要です。このため、従来の商用加圧水型発電炉(PWR)では、原子炉圧力容器の外側に4個又は6個の中性子センサを原子炉軸方向に直列配置して、炉心内からの中性子を計測することにより出力分布を計算評価しています。
 次世代PWR及び受動的安全炉等新型炉用として、1本の中性子センサで炉心軸方向の連続した出力分布を、計算評価を要することなく、直接且つリアルタイムで計測できる核計装システムの開発をめざして研究を行っています。このため、上記システムに用いる新しい構造の位置検出型核分裂計数管(PSFC)を考案すると共にその開発研究を進めています。これまでに、パルス遅延線構造に設計したPSFCにより10 mmの位置検出分解能が得られること、また、PSFCと高速電流パルス計測回路を組み合わせた測定システムでは、毎秒106個の信号が発生するような高計数率の測定においても、計数誤差は2%以下であることがわかりました。
 本PSFCは次世代PWR核計装用としてだけでなく、研究用原子炉、臨界実験装置及び実験用中性子パイル等における中性子束分布を直接計測する実験システムにも適応可能であり、広い応用が期待できるものです。


参考文献

山岸秀志, 遅延線電極構造を有した位置検出型核分裂計数管の信号計測系と計数誤差, JAERI-M 94-010 (1994).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1996
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