6.5 中性子の一生,計算機で追跡する
   

This picture, 67KB


図6-7  コンピュータ上での原子炉(ATR)の断面図

原子炉の燃料棒(直径1.7 cm)の配置、冷却水を通す部分や制御のための管等が三次元で立体的に、詳細に再現されています。この中を飛び回りながら核反応を起こす中性子をモンテカルロ法で追跡します。

 

This picture, 55KB


図6-8  プログラムを開発するために行った研究と応用分野

 


 原子炉を安全に、また安定して運転するには原子炉中の中性子が起こす核反応を含めてその振る舞いを正確に予測する必要があります。モンテカルロ法は、最近の目覚ましいコンピュータの発達によってその強力な手段となりました。モンテカルロ法では、コンピュータ上にあたかも原子炉があるかのような精巧なモデル(仮想原子炉)を用いて中性子の一つ一つを生まれてから無くなるまで正確に追跡します。これを凡そ100万〜1000万個の中性子について行うと、大変精度のよい予測ができます。このためにスーパーコンピュータを用いて、世界最高速の計算を実現するプログラムMVP及びGMVPを開発し、既存のプログラムの平均15倍の速度を達成しました。特に、高いベクトル化率を達成するために開発した「領域選択事象駆動型」計算方式は有効でした。
 これらは現在日本中の多くの大学、研究所、産業界で使用され、その実力を発揮しています。図6-7には、コンピュータ上に構築したATRと呼ぶ原子炉の断面を示しています。このように複雑な構成をしている炉心全体を正確に扱うことは、既存のプログラムでは困難だったのですが、「多重格子形状表現法」を開発し簡単にできるようになりました。このプログラムを開発するために研究した内容と応用分野を図6-8に示しています。


参考文献

森 貴正 他, MVP/GMVP : 連続エネルギー及び多群法に基づく汎用中性子・光子輸送計算モンテカルロコード, JAERI-Data/Code 94-007 (1994).

ご覧になりたいトピックは左側の目次よりお選び下さい。



たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1996
copyright(c)日本原子力研究所