6.6 中性子数の時間変化を見るとエネルギースペクトルが見える
   

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図6-9  核融合炉で使用されるステンレス鋼製の遮蔽体内において、減速時間法により測定した中性子スペクトル

減速時間法(赤点)と従来の陽子反跳を利用する測定法(緑と橙の点)との組合せで、FNSでは14 MeVから熱エネルギーまでの全エネルギー範囲をカバーする媒質内の中性子スペクトル測定が可能になりました。

 


 中性子のエネルギースペクトルは核分裂・核融合・加速器遮蔽など、原子力の幅広い分野における最も基本的な物理量であり、その測定法としてこれまで多くの手法が用いられてきました。しかし1 eV〜1 keVのエネルギー範囲に限ってみると、多くの原子炉が稼働している現在においても、高精度で汎用的かつ媒質内において適用可能な中性子スペクトル測定法は確立していません。
 そこで、従来は他の目的にしか応用されていなかった「減速時間法」を1 eV〜1 keV付近の媒質内の中性子スペクトル高精度測定法として新たに提案しました。媒質に打ち込まれたパルス中性子は時間の経過とともに徐々に減速しエネルギーを失っていきます。この時、減速時間は中性子のエネルギーと1対1対応するため、時間の経過と共に変化する中性子の数を観測することにより各エネルギーごとの中性子の数、つまりエネルギースペクトルを知ることが出来ます。14 MeV中性子源施設(FNS)を使った遮蔽実験に対してこの減速時間法を実際に適用した結果、これまでは測定困難であった0.3 eV〜10 keVのエネルギー範囲において、実験誤差約10%の高精度な中性子スペクトルを測定することに成功しました。


参考文献

F. Maekawa et al., Measurement of Low Energy Neutron Spectrum below 10 keV with the Slowing Down Time Method, Nucl. Instr. & Methods, Section A 372, 262 (1996).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1996
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