7.1 核燃料サイクル確立を目指してデータベースの充実を
   


図7-1  ネプツニウム窒化物の熱伝導度

測定温度範囲内でNpNの熱伝導度はUNとPuN のほぼ中間にあり、その温度依存性はPuNに近く、窒化物燃料は、酸化物と比較して約一桁高い熱伝導度をもちます。

 


図7-2  1000Kにおけるアクチノイド窒化物の熱伝導度

測定値は、アクチノイド系列の原子番号とともに徐々に低下します。

 


 原研で開発研究を進めている群分離及び消滅処理炉、あるいは加速器を組み込んだ核燃料サイクル体系においては、アクチノイドを消滅するための燃料として窒化物燃料を採用しています。この燃料の使用可能性を検討する上で熱・温度に関するデータベースは欠かせません。アクチノイドの中でネプツニウム(Np)は、他の元素にくらべて生成率が大きく約6割を占めているので、ネプツニウム窒化物(NpN)の熱的性質を明らかにすることは極めて重要です。
 アクチノイドは放射性毒性が極めて高く、取扱いが厄介ですが、原研ではグローブボックスの中で炭素熱還元法により高純度Np窒化物を合成し、熱伝導度、蒸気圧等の熱物性の測定を行っています。レーザー・フラッシュ法によって求めたNpNの熱伝導度を図7-1に、また図7-2に1000 Kにおける熱伝導度を他のアクチノイド窒化物と比較して示します。比較のためのUN,PuNのデータは原研の測定値ですが、ThNについては文献値を引用しています。ネプツニウム窒化物燃料は、酸化物と比較して約一桁高い熱伝導度をもつことが確かめられ、使用時の燃料温度を低く抑えることが可能となります。前述したように取扱い上の制約があるため、NpNの熱物性に関するデータは極めて少なく、貴重なデータとなっています。現在、実用燃料としての評価を行うため、さらに(U, Pu, Np)混合窒化物系の合成と熱物性測定を進めています。


参考文献

Y. Arai et al., Thermal Conductivity of Neptunium Mononitride from 740 to 1600K, J. Nucl. Materials 211, 248 (1994).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1996
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