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一般の金属材料やセラミックスは、中性子やイオン照射を受けると脆くなることは良く知られています。例えばステンレス鋼は、延性材料として優れた工業材料であり原子力材料としても広く使用されていますが、中性子照射を受けると著しく劣化してしまいます。従って、将来安全で且つ効率の良い新しい原子炉システムを作るためには、照射に強い材料の開発が強く望まれています。 そこで中性子照射を受けても性能が劣化しない材料、さらに使用中にそれが改善される材料の開発が期待されており、その一環として金属間化合物に注目した研究開発を進めています。Ti-Al金属間化合物は、工業材料として未発達であることもあり、これまで原子力材料としても使用経験はありません。しかし、高温の強度が大きく、軽量で且つ低放射化性など原子力材料としての魅力があり、最近では照射特性に優れた特性が期待できるデータが得られています。図8-1は、中性子照射を受けたTi-47at.% Al化合物の引張特性を照射前の特性と比較して示しています。照射前に約6%あった伸びは、中性子照射を受けると強度の変化を殆ど伴わず約10%と大きくなります。このような現象は通常の金属材料では見られなかった新しいもので、照射に強いだけでなく自己修復能力を持つ夢の原子力材料となる可能性を示しています。 |
参考文献
A. Hishinuma et al., Ductilization of TiAl Intermetallic Alloys by Neutron-irradiation, Intermetallics 4(3) 179 (1996). |
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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1996 copyright(c)日本原子力研究所 |