10.2 画期的な大出力−大強度陽子加速器の開発に向かって
   

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図10-2  中性子科学研究用加速器の概念図

IS:高輝度負イオン源
RFQ:高周波四重極リニアック
DTL:ドリフトチューブリニアック
RFS:高周波電力源
SCC:超伝導加速空胴

 


図10-3  イオン源と高周波四重極リニアック(RFQ)

イオン源から100 keVで入射し、RFQで2 MeVまで加速するのに成功しました。電流はピーク70 mA、パルス幅1 ms、繰り返し100 Hzを達しました。

 


 中性子科学研究施設の中核をなす装置が大強度陽子加速器です。もともと陽子加速器は原子核の研究のために開発されましたが、その後広い分野で応用され、著しい進歩を遂げました。特性改善の努力は、現在でも絶えず続けられています。
 中性子科学研究施設から要請されるビームは、エネルギーが15億電子ボルト(1.5 GeV)、平均電流が10 mAで、従ってビーム出力は15 MWという膨大な値になります。これだけ大きなビーム出力を持つ加速器は世界でも見当りません。今これを目指して、大強度陽子線形加速器の開発が開始されています。大電流を高いエネルギーまで加速するには、ビームを直線状に一気に加速する線形加速器(リニアック)が適しています。
 現在計画されているこの加速器の全体構成を図10-2に示します。リニアックでは、基本的なビーム特性は前段加速部で大体決まってしまうため、この部分が特に重要です。イオン源と高周波四重極リニアック(RFQ)については、試験機の建設と試験が既に行われ、所期の目標を達成しています(図10-3)。イオン源から100 keVで入射され、RFQで2 MeVまで加速されます。加速器の大部分を占める高エネルギー加速部には、所要電力が少ないというだけでなく、いろいろ優れた特性を持つ超伝導空胴を用いる方向で、空胴の設計、テストスタンドの建設など、精力的に検討が進められています。


参考文献

K. Hasegawa et al ., Proceedings of the 10th Symposium on Accelerator Science and Technology, JAERI-Conf 95-021 (1995).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1996
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