10.3 中性子ビームの軌道を曲げる
   


図10-4 
スーパーミラー中性子ベンダー概念図

 


図10-5  スーパーミラーの原理

スーパーミラーはニッケルの2〜3倍の全反射臨界角をもっています。

 


図10-6  スーパーミラー中性子ベンダー断面

 


 研究炉JRR-3は、中性子ビームを用いた材料科学、生命科学及び環境科学の世界的研究拠点ですが、既にその利用応募者は既存設備の許容量を3倍以上も上回っており、早急に新しいビーム孔の建設が期待されています。
 中性子ベンダーは、メインビームラインから中性子を分岐させ、新しいビーム孔を建設するための機器です。中性子は、荷電粒子と異なり電荷を持たないため、その輸送、湾曲、集束には非常に高度な技術が要求されます。原研は、中性子を曲げる手段として、湾曲させた多重ミラーの間を多重反射させながら輸送する中性子ベンダーを開発しました。この際、中性子を反射するミラーとして、最小数10オングストローム厚さの薄膜を約百層蒸着したスーパーミラーを応用しました。スーパーミラーは、中性子散乱長の異なるニッケルとチタンの薄膜を対層としたもので、この周期を変化させることにより、従来中性子導管に使用されているニッケルミラーに比べて2〜3倍の角度で中性子を反射することができます。これによって、世界で初めて1.6 mの曲率でビームを曲げることに成功しました。


参考文献

K. Soyama et al., Transmission Characteristics of a Supermirror Bender, Physica B Condensed Matter, 213 & 214, 951 (1995) .

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1996
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