10.4 中性子で物体の中を見る−中性子照射に耐える高分解能撮像システム
   


図10-7  高解像度静止画撮像システムの概略

試料を透過してきた中性子は、蛍光コンバータによりその強度に応じた可視光に変換されます。可視光により構成される試料の投影画像は第一及び第二ミラーによって反射された後、レンズを通してCCDチップ上に結像されます。使用しているCCDチップは、1000×1018画素の撮像領域を有し、画像情報は14ビットのA/Dコンバータを通してコンピュータにデジタル情報として送られます。

 


図10-8  ライターの撮影例

高解像度静止画撮像システムで撮影したライターの投影画像です。CCDチップは、放射線に対して感度が高いためオリジナルの画像には、ホワイトスポットと呼ばれる白点が数多く見られました。この画像では本システム用に開発したノイズ除去プログラムを用いて画像処理を行い、ホワイトスポットの除去を行っています。コンピュータ上に保存される画像は、14ビットのデジタル画像ですが、画像表示上8ビットのグレースケールに変換して表示しています。

 


 研究炉JRR-3から取り出される強度の強い中性子ビームを用いて、物の内部を非破壊で可視化する中性子ラジオグラフィ技術の開発を進めています。X線の減衰が主として物質内の電子密度に依存するのに対し、中性子の減衰は原子核との相互作用に依存します。このため中性子を用いることによりX線では得られない物の内部情報を得ることが可能となります。JRR-3の中性子ラジオグラフィ装置では、撮像システムの高空間分解能化及び高時間分解能化を目指して開発を進めており、高空間分解能化では冷却型のCCD(Charge Coupled Device)カメラを用いた撮像システムにより100μmを切る分解能で撮像できます。高時間分解能化では1秒間にフルフレームで4500枚以上の画像を取り込む撮像システムの開発を進めており、極限条件下での流動現象等の解明に利用する予定です。


参考文献

M. Matsubayashi et al., High Resolution Static Imaging System Using a Cooled CCD Camera, Proceedings of the Second International Topical Meeting on Neutron Radiography System Design and Characterization, Shonan Village Center/Rikkyo Univ. Nov. 12-18, 242 (1995).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1996
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