2.2 凹型の電流分布はなぜ閉じ込めを良くするのか?
   

 トカマクのプラズマ電流の分布を制御して、凹状の電流分布をつくると、安全係数がプラズマの中心から外に向かって減少する“負磁気シア”をもった磁場が形成されます。

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図2-2 プラズマ中の乱れと磁気シア

粒子シミュレーションによって得たプラズマ中の乱れの大きさと磁気シアの関係を示します。プラズマの断面で見た乱れの大きさは、負磁気シアの場合(c)が、正磁気シアの場合(a)(b)と比べて十分小さいことがわかります。

 


 トカマクのプラズマでは、しばしば広い範囲にわたって生ずる乱れが閉じ込めを悪くする要因になっています。これを克服して閉じ込めを改善する有効な方法の一つは、プラズマの電流分布を凹状に制御して、“負磁気シア”という構造を持った特殊な閉じ込めの磁場をつくることです。このときプラズマの内部に、あたかもプラズマの熱の流れを遮るような“閉じ込めの壁(輸送障壁)”ができ、その内側ではプラズマの閉じ込めが著しく改善されることが実験で確認されています。
 私たちは理論的検討とシミュレーション計算によって、負磁気シアの磁場中ではこのような乱れがあまり成長できず、さらに、磁気シアが負から正に変わるシアがゼロの付近では、乱れの成長が非常に低く抑えられるため、この付近を境にして乱れの構造が分断され、プラズマ中に大きな乱れが存在できなくなることを示しました。この境界の存在が、実験でみられる“閉じ込めの壁”を生ずる役割を果たしているものと考えられます。


参考文献

Y. Kishimoto et al., Effect of Weak/Negative Magnetic Shear and Plasma Shear Rotation of Self-organized Critical Gradient Transport in Toroidal Plasmas, 16th IAEA Fusion Energy Conference, Montreal, Canada, IAEA-CN-64/DP-10(1996).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1997
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