2.5 大型プラズマの密度変化を瞬時にとらえる新システム
   


図2-6  2波長レーザー干渉による光路補正とディスラプション時の電子密度の変化

(a)2波長のCO2レーザー干渉の生信号には1波長の数十倍の振動による位相変化の波形が見られます。補正した結果が線電子密度となりますが、この図の場合、位相変化は最大でも1波長の半分以下に相当する微小量です。●はトムソン散乱による値(線電子密度をプラズマ中のレーザー光の伝搬距離で割ると平均電子密度(m-3)になります)。(b)電子密度の急速な変化が測定できるようになったため、ディスラプションの現象と発生の機構の研究をさらに深めることができます。

 


 プラズマの電子密度は、レーザー干渉計によって測定します。JT-60では、プラズマ中の透過性と位相感度の点から、波長10.6μmと9.27μm(1μm=百万分の1m)の2台の炭酸ガス(CO2)レーザーを組み合わせたシステムを新しく開発しました。大型トカマク装置では運転に伴い、電子密度変化の信号にその100倍近くもの光学系の振動が重畳してくるので、これを正確に補正するため二つの異なった波長のレーザー光による同時測定が必要だからです(図2-6(a))。近接した波長を用いることにより、多くの光学部品の共通化,簡素化ができましたが、波長が近接するほど測定精度が悪くなるので、位相測定の精度を向上させるため、1波長の1万分の1以上の位相分解能をもつ弁別器を開発しました。これらの開発により従来困難であった、ディスラプション時の電子密度の挙動を精度良く測定できるようになりました(図2-6(b))。
 このシステムは国際熱核融合実験炉ITERなどにも十分適用できるものです。


参考文献

Y. Kawano et al., Dual CO2 Laser Interferometer with a Wavelength Combination of 10.6 and 9.27 mm for Electron Density Measurement on Large Tokamaks, Rev. Sci. Instrum., 67, 1520 (1996).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1997
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