2.8 1MW以上の大出力サブミリメートル波を発生する短パルス用ジャイロトロン
   


図2-10  170GHz短パルス用ジャイロトロンの外観。

全長3m、重量750kg

 


図2-11  開発したジャイロトロンの出力特性

高次共鳴モードTE31,8(円周、径方向に各々31と8周期)の発振。加速電圧は87kV、電子ビームのピッチ定数αは1、磁場は各々のビーム電流で最適化されています。

 


 プラズマを加速したり加熱する手段として用いる電子のサイクロトロン運動に共鳴する電磁波は、エネルギー密度が高いなど優れた特性をもっています。しかし、サブミリメートル領域の1MW以上の強力な電磁波発生源の開発に困難がありました。その困難の一つは電磁波集中による空洞共振器の壁の過熱を避けるためジャイロトロンの高次共鳴モードを用いると、近接する他のモードとの競合や混合が発生し、高出力化を阻害することでした。ジャイロトロンの開発では第一に純粋な高次モードを高出力・高効率で実現することが重要です。
 ITER用に開発した170GHzの短パルス用ジャイロトロンの外観(図2-10)と、発振試験の結果得られた出力特性を図2-11に示します。発振効率29%で1.13MWの出力を0.4ミリ秒の間安定に得ました。これは発振出力の点でITERの要求を満たしています。この成功は質の高い電子ビームの実現、空洞と磁場形状の最適化、寄生モードの抑制のためのシリコンカーバイトリングの装備等の工夫によるものです。
 今後の課題は、出力をより長い時間取り出すことです。現在は窓材の温度上昇のため525kW、0.6秒で制限されていますが、電磁波損失の少ない窓材の開発とその損失を窓断面で平坦化するための電磁波モード変換器の高性能化の開発を進めています。


参考文献

K. Sakamoto et al., Stable Single-mode Oscillation with High-order Volume Mode at 1MW, 170GHz Gyrotron, J. Phys. Soc. Jpn, 65(7), 1888(1996).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1997
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