表3-2 製造したRIとその標識化合物 |
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現在、癌の検査や診断にテクネチウム(Tc)のラジオアイソトープ(RI)99mTcが使用されています。最近、周期律表でテクネチウムと同族のレニウム(Re)のRIである186Re(半減期90.6時間)と188Re(16.9時間)の利用が注目されています。私たちはRIの製造とともに、利用に適した標識化合物の合成の研究を進めています。 186Reは表3-2のように、濃縮した185Reを原子炉で中性子照射するか、または186Wをサイクロトロンの陽子線で照射して製造します。188Reは濃縮した186Wを原子炉中性子で照射して得た188W(69.4日)の娘RIとして製造します。188Wから188Reを分離する簡便な装置として188Wを吸着したアルミナカラムに陰イオン交換樹脂カラムを繋いだジェネレータを開発しました。これにより短寿命の188Reの利用が容易になります。 レニウムの標識化合物として、表3-2のような標識医薬の合成法を開発しました。HEDP(1-ヒドロキシエタン-1、1-ジホスホン酸)は骨転移癌の疼痛緩和剤として期待されています。図3-12は186Re-HEDPをマウスの尾静脈に注射して得た全身のガンマカメラの像です。骨に集積しているのがわかります。188Re-MAb(モノクローナル抗体)は診断と治療を同時に行う放射性医薬として期待されています。188Re-DMSA(ジメルカプトコハク酸)は腎疾患の診断に広く使用されます。この標識には、188W/188Reジェネレータから得た無担体の188Reを利用しました。 |
参考文献
K. Hashimoto, Synthesis of 188Re-MDP Complex Using Carrier-free 188Re, Appl. Radiat. Isot. 47(2), 195(1996). |
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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1997 Copyright(c) 日本原子力研究所 |