4.1 圧力容器監視試験片を繰り返し使う新技術
   


図4-1  監視試験片再生の流れ

監視試験片として装荷されているシャルピー衝撃試験片の未変形部を用いて新たな試験片を作ろうとするものです。表面活性化接合は真空中での回転摩擦下での圧接により溶融を伴うことなく接合するので、他の接合法に比べ入熱を大幅に減らすことができます。

 


図4-2  表面活性化接合時の温度計測

回転摩擦時に、接合界面近傍では温度上昇するものの、温度上昇領域は2mm以内であることがわかります。同時に十分な接合強度も得られることも確かめました。

 


 原子炉圧力容器を構成している鋼材は多くの中性子を受けると、経年変化として最も重要な現象の一つである照射脆化を生じます。このため、原子炉の稼働中は圧力容器内に監視試験片(主にシャルピー衝撃試験片)を装荷しておき、所定の期間ごとにとりだして脆化の程度を把握しています。
 ところが原子力プラントの供用期間が長期化すると、監視試験片の数が不足する可能性があります。その対策として開発を進めているのが監視試験片の再生技術です。これは、試験が済んだシャルピー試験片の未変形部分を類似の材料と接合することにより新たな監視試験片を再生しようというものです(図4-1)。 ここで細心の配慮をしなければならないのは、新たな試験片に、再生の際の影響が入らないようにすることです。すなわち、経年変化が接合時の熱で失われても、また新たな材料との接合が試験結果に影響を及ぼしてもいけないわけです。
 この研究では、表面活性化接合という接合法を監視試験片の再生に初めて採用しました。図4-2は、接合時の温度上昇を示しています。材料の温度が290℃以上に上昇する領域は、照射脆化が急速に回復してしまうので、真の材料特性からずれてしまいます。温度上昇領域を接合面から2mm以下に押さえることができる上、良好な接合強度を持つなど、これまでの方法と比べ好条件での試験片の接合が可能となりました。この技術により十分な試験片の確保へ大きく前進しました。


参考文献

Y. Nishiyama et al., Reconstitution of Charpy Impact Specimens by Surface Activated Joining, ASTM STP 1329, 484 (1998).

ご覧になりたいトピックは左側の目次よりお選び下さい。



たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1997
Copyright(c) 日本原子力研究所