4.5 信頼性の高い空気中放射能モニター校正システムの新アイデア
   


図4-8  長軸の比例計数管に注入した放射性ガスの拡散による放射能分布の変化

注入したガスが計数管の端に達するまでの400秒以内の時間では、全放射能値が正しく測定できることが分かります。

 


図4-9  図4-8の原理による気体状放射能の直接測定と、それに基づく放射性ガスモニタの高信頼度校正を一貫して行うシステム

 


 原子力施設内外の安全確保のために、空気中の放射性ガス濃度を測定するガスモニタは、実際の放射性ガスを用いた校正による信頼性の保証が不可欠です。しかし、正確に値(あたい)付けされた種々の標準ガスを入手することも、また、校正定数を求める過程での不確かさの増大を抑えることも、容易ではないのが実状でした。
 私たちは、長い比例計数管を用い図4-8のように中央部から注入した放射性ガスが計数管中に拡散していく間に、全β線を計数するという方法で放射能値を決定し、校正用基準ガスの値付けをする新しい方法を開発しました。複数の計数管を組合わせて用いる従来の方法に比べて単純で、かつ精度も高いのがこの方法の特徴です。
 一方、校正を行うガスモニタには微量の放射性ガスを含む空気を流さなければならないので、校正系は基準系とは別ループとし、ガス分取容器の所で連結しました。これにより、校正系のガスの一定量を分取し基準系に送り込んで、その放射能濃度を正確に決めることができるわけです。
 このようにして、種々のガス標準をみずから作り、信頼度の高いモニタ校正ができる新しい方式が確立され、実際に役立っています。


参考文献

M. Yoshida et al., A Calibration Technique for Gas-flow Ionization Chamber with Short Half-lived Rare Gases, Nucl. Instrum. Methods., A383, 441 (1996).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1997
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