5.1 9億個の燃料粒子の寿命を予測
   −長寿命粒子の開発に向けて−
   


図5-1  運転中のHTTR初装荷燃料の挙動予測

製造時にSiC層に亀裂のある燃料粒子及び健全な燃料粒子が、照射とともにPyC層が破損し、貫通破損に至る確率を示しています。健全な粒子では、最高燃焼度33GWd/tでもほとんど破損が起らないと予測できます。さらに、この図のSiC層破損粒子の確率から導かれるFPガス濃度を基準に、運転時の冷却ガス中の放射能濃度を監視することによって、燃料挙動の異常を検知できます。

 


図5-2  高燃焼度用燃料の開発

燃料核に接している低密度炭素層(バッファー層)及びSiC層を厚くするように設計した高燃焼度用燃料では、貫通破損に至るまでの寿命(燃焼度)が初装荷燃料の場合の約1.8倍と増加します。これは、バッファー層を厚くすることによりFPガスの閉じ込め能力が増し、内圧の上昇を抑制するとともに、SiC層の強度が増大することに起因します。

 


 1997年12月臨界予定の高温工学試験研究炉(HTTR)用燃料について、多岐にわたって研究開発が行われています。被覆燃料粒子では、内外の熱分解炭素(PyC)及び中間の炭化珪素(SiC)の三重の被覆層が軽水炉燃料の被覆管の役目を果たしています。炉に装荷される9億個の燃料粒子について、被覆層の破損確率を予測することは極めて重要です。
 従来の破損モデルでは、SiC層の破損挙動のみを捉え、この層が破損すれば貫通破損し、核分裂生成(FP)ガスが放出するとしていましたが、照射試験結果を反映していません。そこで、SiC層の破損のみではFPガス放出には至らず、たとえ製造時にSiC層に亀裂があっても、稼働中に内外層のPyCに破損が発生したとき、はじめて貫通破損に至るという新モデルを構築しました。これによって、図5-1、5-2に示すように初装荷燃料及び将来の高燃焼度用燃料の寿命を、より実際に即して予測することができます。また、高燃焼度用燃料開発の有用な道具になっています。


参考文献

K. Sawa et al., Development of a Coated Fuel Particle Failure Model under High Burnup Irradiation, J. Nucl. Sci. Technol., 33(9), 712 (1996).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1997
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