5.3  原子炉事故時における大量の空気侵入を防ぐ
   


図5-5  主配管破断が生じた時の炉内の流れ

主配管破断が生じた場合には、炉心部の高温流路と炉心部外側の低温流路の間の浮力によって駆動される自然対流に乗って大量の空気が炉内に流入するが、炉内のヘリウムは空気より軽いため、主配管破断後直ちに空気の自然循環流が発生することはありません。

 


図5-6  事故時の空気流入防止方法

配管破断直後、自然循環流によって大量の空気が流入しても原子炉の低温流路にヘリウムを注入すると自然循環流は停止します。従って、事故後ヘリウムを適当な流量で低温流路に注入すれば自然循環流発生を防止できます。

 


 高温ガス炉の炉心内には沢山の黒鉛があります。それ故、万一、原子炉容器に接続されている主冷却配管が壊れると、破断個所から空気が侵入し黒鉛構造物を燃焼させます。それでは、事故時に大量の空気が炉内へ流入するのを防ぐことはできるでしょうか?私達は二つの方法を見つけました。
 第1の方法は、事故後できるだけ早く原子炉を冷却する方法です。主配管が壊れた時、大量の空気は、炉心の中央にある高温流路と、その外側を取り囲む低温流路の間の浮力によって発生する自然循環流に乗って炉内に流入します(図5-5)。しかし、配管が壊れた時点では、炉内には空気より軽いヘリウム(He)が充満しているため、直ちに自然循環流は発生しません。従って、空気の自然循環流が発生する前に炉心を冷却してしまえば良いのです。試験の結果、炉心の冷却速度を毎時約6℃より大きくすれば空気の自然循環流は発生せず、大量の空気流入を避け得ることが分かりました。また、冷却速度が毎時約4℃〜6℃では、空気の自然循環は発生するものの、その時点では、既に炉心の温度は低いため、黒鉛と空気は反応せず、危険のないこともわかりました。
 第2の方法は、低温流路にヘリウムガスを注入する方法です。ヘリウムは軽い気体であるため、低温流路にヘリウムを注入すると、浮力は大きくならずいつまで経っても空気の自然循環流は発生しないことが分かりました(図5-6)。


参考文献

武田哲明他,高温ガス炉の配管破断事故における空気侵入防止技術の研究,日本機械学会第5回 動力・エネルギー技術シンポジウム'96 講演論文集,82 (1996).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1997
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