5.4 高温ガス炉の熱を水素エネルギーに
   −連続製造の基礎実験成功−
   


図5-7  水素連続製造予備試験装置の構成

ISプロセスによって水素を連続して製造することができることを検証するため、小型の水素連続製造予備試験装置を作り、試験を進めています。この装置は石英ガラス製で、装置の中の圧力は大気圧です。化学反応器、精製濃縮器、分解器、蒸留器などを必要な温度にするために、電気ヒーターで加熱しています。将来の実用プラントの場合は、水の分解反応に必要な熱エネルギーは、高温ガス炉の高温ヘリウムから供給されることになります。

 


図5-8  水素連続製造試験における 水素及び酸素発生速度の経時変化

水素連続製造試験の結果を示しました。水素の発生速度は、1時間にほぼ1.2リットル、酸素は、ほぼ0.6リットルで、理論どおり2対1の割合になっていることが分かります。また、この図には24時間運転のデータが示されています。試験の結果から、ISプロセスにより安定して水素の製造ができることを立証できました。

 


 水素を大量に、低いコストで製造できれば、将来のクリーンエネルギーシステムのエネルギー源として有望な候補になるでしょう。
 水素の製造法は、現在の技術では水の電気分解が最も確実な方法です。しかし、発電効率を考えると水素製造の効率が制限され、さらに便利な電気をそのまま電気分解に使うのはあまり得な方法とはいえません。
 そこで、高温ガス炉で発生する高温の熱を利用し、水を原料として水素と酸素に分解する熱化学法による水素製造の研究を進めています。熱化学法のプロセスは何段階かの化学反応を利用し、最終的には水を水素と酸素に分解するもので、反応に用いる薬品はプロセスの中で繰り返し利用されます。
 私たちが開発を進めている熱化学法プロセスは、ISプロセスといい、硫酸分解反応、ヨウ化水素分解反応およびブンゼン反応を組み合わせて用います。
 私たちは、ISプロセスの実験装置を用いて24時間試験を行い、閉サイクル水素製造を立証することができました。


参考文献

H. Nakajima et al., Hydrogen Production by Iodine-Sulfur Process for Thermochemical Decomposition of Water, Proc. Int. Hydrogen and Clean Energy Symp., IHCH'95, 251 (1995).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1997
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