7.2 融点降下の精密測定で燃料ペレットの 燃やせる限界を知る
   


図7-3  アルミナ試料で得られた温度−時間曲線上の融点を示すピーク

このピークは融解試料を冷却し、液相から固相に変わる際の過冷却状態が解消されて温度が上昇したものです。

 


図7-4  セラミックス標準試料の融点測定を行い、文献値と比較して作成した補正曲線図

この曲線を用いて、照射済燃料ペレットの融点(測定値)を補正し、より精度の高い融点を求めます。

 


 我が国の軽水型原子力発電所で使用されている燃料の信頼性は既に十分確認されており、最近では原子力発電の経済性の向上等を目指して、燃料の高燃焼度化が図られています。このため、高燃焼度化に対応した新しい設計による燃料が製造され、この燃料を実際に原子力発電所で燃やし、燃料の健全性を確認するための照射後試験が行われています。
 私たちは、高燃焼度燃料の照射後試験を行うために、ペレット融点測定装置等の新しい照射後試験装置を開発し、燃料の健全性を確認するための貴重なデータを取得しています。
 ペレット融点測定装置は、照射による燃料ペレットの融点降下を調べる装置です。高周波加熱炉を用いて、タングステン製カプセルに封入された照射済燃料ペレットを約3,000℃まで加熱し、カプセル底面の温度を放射温度計を用いて連続的に測定します。この測定により、図7-3に示すような温度−時間曲線上のピークが検出されます。一方、この装置を用いて、融点が明らかなセラミックス標準試料の融点測定を行い、測定された融点と文献値を比較して図7-4に示すような補正曲線を作成しました。この補正曲線を用いて照射済燃料ペレットの融点(測定値)を補正し、より正確な融点を求めます。照射済燃料ペレットの融点降下の実測結果はごく限られており、原子炉燃料を安全に限界まで燃やすための重要なデータを提供していくことが期待されます。


参考文献

T. Yamahara et al., Development of Post-irradiation Examination Techniques at the Reactor Fuel Examination Facility, Proc. Tech. Comm. meet., Oct. 17, 1994, Cadarache, France, IAEA-TECDOC-822 (1995).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1997
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