7.3 高レベル廃棄物を分離・消滅させ後世への負担を軽減する
   

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図7-5  窒化物/高温化学再処理法に基づくアクチノイド消滅処理サイクルの概念

第1階層の商用発電炉燃料サイクルにおいて発生した高レベル廃棄物から群分離によってアクチノイド硝酸塩を抽出します。ゾル・ゲル法による固化処理、続いて炭素熱還元処理によって、アクチノイド窒化物の微小球が製造されます(写真は、ウラン窒化物の微小球)。このとき、反応ガスに窒素の同位体N-15を使用すれば、N-15濃縮の窒化物が得られます。このあと、消滅処理炉用燃料としてTiN被覆窒化物燃料粒子を充填した燃料要素に加工されます。第2階層のアクチノイド消滅処理サイクルに移り、この窒化物燃料を消滅処理炉で燃やし、発電とともにアクチノイドを消滅させます。未燃焼の燃料は、高温化学再処理によってアクチノイド金属に精製され、窒化処理されて、再び消滅処理炉に投入されます。図の右側に示した溶融塩電解精製装置を用いて、陽極の周りに装填された窒化物燃料は、溶融塩に溶解し、陰極側に移動して金属の形で析出し、回収されます。

 


 燃料再処理工場から排出する高レベル廃棄物には極めて毒性の高い長寿命核種のアクチノイド(Np,Pu,Am,Cmなど)が含まれており、この処理・処分が大きな関心事になっております。原研が取り組んでいる群分離・消滅処理システム(オメガ計画)の特徴は、このアクチノイドを群分離したあと、専焼炉または加速器で消滅させるとともに発電を行うこと、未燃焼のアクチノイドを再処理、消滅を繰り返すことによって廃棄物にしないことにあります。
 専焼炉の燃料として高い消滅効率を達成するには、アクチノイド原子を緻密に詰め込んだ燃料が理想的です。高密度燃料の形態としては金属と窒化物がありますが、窒化物燃料に主眼をおいた消滅処理サイクルの技術的可能性の検討を進めています。窒化物燃料は、金属に匹敵する熱伝導度を有するため、原子炉の中で燃料温度を低く抑えることができます。また融点が高い(約3,000K)ので、核分裂生成ガスの放出量の低減化が可能です。これによって燃料被覆層の厚さを薄くでき、アクチノイド消滅に有効な高速の中性子束を増やすことができます。さらに、専焼炉で燃焼させたあと、未燃焼の窒化物燃料の再処理に「溶融塩電解精製」という高温化学プロセスを適用することにより、従来の湿式法にくらべて再処理施設の小型化が可能になります。ウラン窒化物の実験に続いて、1997年にグローブボックスの中に設置した溶融塩電解精製装置を用いて、PuN及びNpNについて電解精製プロセス技術の検討を行っています。


参考文献

T. Ogawa et al., Concepts of Dense Fuel Cycle Processing for Actinide Burning/Breeding, Proc. Pacific Basin Nuclear Conf., Oct. 20-25, Kobe, Japan, 1179 (1996).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1997
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