8.1 世界最高の高温強度の耐熱合金開発
   −継ぎ目なし管も作れる優れた加工性−
   


図8-1  新しく開発したNi-Cr-W超合金と既存の耐熱合金の比較

 


 核分裂や核融合で発生されるエネルギーは、数〜十数MeVと極めて大きいので、原子力は高熱を発生させる可能性を持っています。温度が高いと熱効率が良くなるほか、新しい材料の開発や高温での化学反応などの種々の熱利用の展開も期待されます。しかし、そのためには何よりも先ず、高温で十分な強度を保ち、かつ耐久性を持つ材料が必要です。こうしたことから、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、タングステン(W)を主成分とする合金を研究し、微量に含まれる元素の効果を系統的に調べました。その結果、十分に鍛造に耐える世界最高の高温強度を持つ合金材料を作ることに成功しました。この合金は力をかけて長時間にわたり高熱にさらすクリープ試験でも優れた強度を示し、耐食性、加工性、クリープ強度についてもバランスのとれた優れた性能を持っていることを確認しました。また、十分な冷間加工性、熱間加工性を持つことから継ぎ目なし管を作り、1,000℃で使用できることも試しました。この耐熱合金は次世代の高温ガス炉や、非原子力分野の高温材料として大きな寄与が期待されています。


参考文献

H. Tsuji et al., Development of Ni-Cr-W Superalloy for Application to High Temperature Structures, Proc. Int. Conf. on Materials for Advanced Power Engineering, 939 (1994).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1997
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