8.2 金箔が仲人になって銅とステンレスが固く結ばれた
   −良い所いっぱいの耐高熱負荷材料−
   


図8-2  アルミナ分散強化銅とステンレス銅接合材の光学顕微鏡組織

 


図8-3  アルミナ分散強化銅と接合材の引張強度と3点曲げ破壊エネルギーの比較

接合材の引張強度は母材の強度が得られます。しかし直接接合材の破壊エネルギーは母材の20%です。金箔を挿入すると50%まで上昇します。

 


 材料科学は、常に科学技術の目覚ましい進歩を支えてきました。核融合炉では、プラズマに対向する第一壁を通してくる高エネルギー中性子の激しい照射と熱負荷に耐えると同時に、発生する熱を効果的に冷却材に送る熱伝導性に優れた材料が必要です。国際熱核融合炉(ITER)のブランケット及びダイバータの材料には、高い熱伝導性と強度の観点からアルミナ分散化銅を使うことが考えられています。しかし、アルミナ分散化銅は耐食性・耐放射線性・耐熱性に弱いといわれています。そこで316ステンレス鋼と接合し、それぞれの材料の性能を発揮させた技術を開発しました。
 こういう異種材料の接合には、従来の溶接では融点の違いもあり、中性子照射による劣化や金属間化合物の生成によって溶接部が脆くなる問題があります。またアルミナ分散化銅は、溶融するとアルミナが結晶粒界に集まって脆くなります。そこで、融点以下の温度で、溶融することなくアルミナ分散化銅と316ステンレス鋼双方を密着させ原子を互いに相手の材料に拡散させてなじませる固相拡散接合法を適用しました。その際、新たに接合面に金箔を挿入することで、接合面での欠陥を減少させることができることを見いだしました。図8-2、8-3に直接接合及び接合面に金箔を挿入して接合した組織と強度を示します。直接接合では接合部に欠陥が見られますが、金箔を挿入した時はその欠陥が減少し、接合部の強度を上昇させ、それぞれの材料の性能を発揮させることができました。


参考文献

西宏他,固相拡散接合法の核融合への適用,原子力工業,42(9),18(1996).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1997
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