9.1 原子炉運転も船の動きもコンピュータの中に
   −原子力船シミュレータの完成−
   


図9-1  原子力船シミュレータのシステム構成

波・風等の環境からの外力により相互に関連しあう船体運動、タービンおよび原子炉プラントの挙動を模擬します。

 


図9-2  「むつ」実測データとシミュレータ結果の比較例

「むつ」における原子炉出力70%、舵角左35度の定常旋回のシミュレーション結果と実測データの比較で良い一致を示しています。機関は主軸回転数一定モードで運転されました。

 


 波や風のある厳しい海洋環境下で、舶用炉の運転条件を定めたり、また原子力船が安定に運航できることを事前に確認するためには、正確に原子力船の挙動を摸擬できる原子力船シミュレータの開発が必要です。そこで、種々の海洋環境下で船体、タービンおよび原子炉プラントの挙動を一貫して実時間で模擬できるシステムの開発を進め、世界で初めて原子力船シミュレータを完成しました(図9-1)。このシミュレータを用いて荒海域における実験航海等の予測解析を実施し、運転員に運転指針を提供しました。シミュレータの性能確認は原子力船「むつ」の出力上昇試験と1年間の実験航海によって得られたデータとシミュレータの詳細な検証を行い、充分な精度で摸擬できることを実証しました(図9-2)。「むつ」のシミュレータで得られたシミュレーション技術・分析技術をもとに、現在改良舶用炉モデルを構築中です。このシミュレータは改良舶用炉の設計および運転性能の評価、さらに自動化研究に活用されます。


参考文献

T. Kusunoki et al., Simulation of a Marine Nuclear Reactor, Nucl. Technol. 19, 275 (1995).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1997
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