10.1 世界最高性能の放射光施設完成、供用開始へ
   


図10-1  線形加速器加速管室内部

銅製のパイプで長さ3mの加速管。1本の加速管は、ビームを通す穴の空いた81個の小さな加速空洞から構成されています。

 


図10-2  シンクロトロン内部

中央に位置するものがシンクロトロン本体。青い機器が長さ3mの偏向電磁石。左手上方に位置するものが蓄積リングへビームを輸送するラインです。

 


 大型放射光施設SPring-8は、世界最高性能の高輝度放射光を発生させる8GeV(80億電子ボルト)蓄積リングと、電子を発生し供給するための入射系加速器(1GeV線形加速器と8GeVシンクロトロン)から構成されています。
 最初の加速器である線形加速器は、電子を発生させる電子銃を先頭に、26本の加速管を全長140mにわたって一直線上に配置した装置です。地球の丸みの影響を避けるために、レーザー光線を利用して ±0.15mm以下の精度で一直線上に機器を据え付けました。電子は約1,000度に加熱した電子銃で発生させ、加速管の中で高周波によって加速されます。毎秒60回のパルス運転が可能です。
 2番目の加速器であるシンクロトロンは一周が396mのリング型加速器であり、各種電磁石、高周波加速空洞等が配置されており、ビームが通過するところは一周にわたって高真空に維持されています。線形加速器から1GeVの電子ビームを受け取り、8GeVまで加速したのち、それを蓄積リングへ送ります。このような加速運転を1秒に1回繰り返し行うことができます。
 すでにシンクロトロンからの電子ビームを受け取った蓄積リングでは、ビームを安定に周回させ、長い時間蓄積を続けることに成功しました。利用研究者は、周回する電子ビームが発生する放射光をいろいろな先端的な研究に利用することになります。平成9年秋には利用研究者に放射光の供用を開始する予定です。


参考文献

H. Yokomizo et al., Linac and Booster Synchrotron for SPring-8 Injector, Proc. 5th European Particle Accelerator Conf. 688 (1996).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1997
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