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高エネルギー陽子が入射した原子核は、多くの粒子を放出する核破砕反応を起こします。そのメカニズムをシミュレートする核反応計算コードの精度を向上させるために、計算モデルの改良を行い放出中性子のエネルギーや放出角度の分布を実験値と比較しました。核子・中間子輸送コード(NMTC/JAERI)では、核内反応を自由核子間の二体衝突過程(核内カスケード)として扱う近似のため、200MeV以下の入射陽子の反応では、予測精度が充分でないことが指摘されていました。これを改善するため、(1)カスケード過程とその終了後に移行する平衝過程の間に、前平衡過程を導入しモデルを精密化する(3STEP)、(2)核内で運動する核子の波動性を考慮するため、反射屈折及び媒質効果を採り入れる(ISOBAR)の二点の改良を行いました。改良後の計算値と実験値の比較を炭素や銅、金のターゲットに陽子を入射させた場合について行った結果、低エネルギー陽子(20〜100MeV)反応の予測精度が大幅に改善されたことが確認されました。図11-3は、68MeVの陽子を金に入射させた場合で、放出角度について中性子エネルギースペクトルの改良前後の計算値と実験値を比較してあります。改良前の計算値(黒実線)は、20MeV以上の領域で60°方向では実験値をかなりよく再現していますが、15°〜30°方向では過大評価、120°方向で過小評価しています。これに対して改良モデル(ISOBAR)の計算値(赤実線)は、全ての方向に対して全エネルギー領域で実験値と良い一致を示しました。 |
参考文献
高田 弘,核内カスケードモデルを用いた陽子入射実験解析,原子核研究,41(3),39 (1996). |
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